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学芸員コラムCOLUMN

2021年9月1日 更新 / 企画展について

建物を描く

9月は暦の上では秋になりますが、まだまだ暑い日が続いていますね。
本日より新たな企画展「建物を描く」がスタートします!新型コロナウイルスの感染が広がってからは遠くに旅行する事が難しくなりましたが、本企画展では美術館に居ながら世界の景色を眺めるというコンセプトで企画しました。
景色をそのまま写す写真とは違い、絵画は作者の作風によって景色の見え方が大きく変わるのが特徴です。作者の目を通して見た様々な風景を是非ご堪能ください。

今回のコラムでは展示作品の一部をご紹介します。

 


・荻須高徳「ジュリアン・ラクロア通り」

愛知県出身の画家。藤島武二に師事し、東京美術学校を卒業後はフランスへ渡ります。戦争で一時帰国を余儀なくされましたが、画家としての活動期間の大半をパリで過ごしました。ブラマンクやユトリロの影響が見受けられ、パリの街角、店先などを荒々しい筆致で描きました。その後穏やかな筆致で造形性に富んだ構成でパリの都市風景を描くようになります。日本人でありながらパリと深い関りを持ったため、当時の市長より「最もフランス的な日本人」と評されました。
荻須高徳が過ごしたパリ市は20の行政区画に分けられ、ジュリアン・ラクロア通りは市の東部に位置する20区にあります。

 


・高畠達四郎「ニース港(南仏の港)」

東京都生まれ。1921年から渡仏し、キスリングなどのエコール・ド・パリと呼ばれる画家たちの影響を受けた人物。素朴な作風が特徴で、カンヌやニースなど南仏の景色を多く描きました。帰国後は林武らと共に独立美術協会を創立しました。
ニースは背後を山々に囲まれた美しい港町です。一年を通して気候が安定しているため、夏のリゾート地としてはもちろんのこと、冬の避寒地としても人気があります。

 


・ベルナール・ビュフェ「駅のホテル」

フランス生まれ。幼い頃に母親を亡くし、ひとりで絵を描くことが多かったそうです。パリ国立高等芸術学校に入学し、1948年にはパリで最も権威のある新人賞・批評家賞を受賞しました。
硬質で鋭く太い針金のような輪郭線、モノトーンに近い色彩を特色とする独自の様式を築き、その画面には第二次大戦後の作者の不安で荒涼とした心象風景が表されています。またビュフェは油彩画のみならず、優れた版画も多く制作しました。

 


・モーリス・ユトリロ「シャトウの教会」

フランス生まれ。若い頃の飲酒癖が原因でアルコール依存症になり、治療の一環として画家の母親から絵を描くことを勧められたことで画家を目指すようになりました。
時期によって大きく作風が変わる人物であり、白を基調とした作品が多い「白の時代」が最も評価が高いと言われています。

 

「建物を描く」の展示は11月29日(月)まで。皆様のご来館をお待ちしております。